⒈耳閉感・耳鳴りの原因

耳がつまる感じ(耳閉感じへいかん)や耳鳴りの原因はいくつかあります。
鍼灸で対処できるのは、「ストレス・疲労による血流不足が原因で神経伝達に不具合がある場合」です。

ちょっと、耳閉感や耳鳴りの原因全般を見てみましょう。
外耳では、耳垢や水など異物がふさいで起こる。
中耳では、中耳の中の空気圧と外界の大気圧の差で起こる。
  →「耳管狭窄・耳管開放」が原因
内耳では、神経と密接につながっているので、ストレスや疲労による自律神経の乱れの影響を受けて、聞こえの神経がダメージを受ける

耳閉感の原因を考えるとき大事なのは、「中耳の中の空気圧」と「外界の大気圧」です。
列車でトンネルに入ったり、エレベーターやロープウェーなどの乗り物で急激に高さが変化すると、耳がつまる感じになることがあります。
あの時感じるのと同じ異常が、自分のからだの不調によって起きてしまうのです。

からだには、「耳管」というノドと中耳をつなぐ長さ3.5cmほどのトンネルがあり、高さ(気圧)の急激な変化などが起きた場合、ここで外界と中耳との気圧の差を調整して、聞こえを確保するようになっています。
このシステムがうまく機能しないとき、耳閉感が起きるのです。
「耳」という「構造物」をつくっている主な「材料」は、もちろん筋肉です。
そして筋肉は「こる」ものです。
つよい緊張が長期間続いたり、突発的に想定外の緊急事態に直面したりすると自律神経のバランスが崩れて、中耳と内耳の空気圧に差ができて、耳閉感やさらには耳鳴りが生じます。

耳管の異常としては、「耳管狭窄」と「耳管開放」の2通りがあります。
くわしくは「コラム」をご覧ください。

⒉めまい

⑴めまいの原因はつかみづらい

多くの人が経験している「めまい」ですが、じつは現代の科学をもってしてもわからないことがたくさんあります。

「日本めまい平衡医学会」によると、「めまい」とは、
【安静にしている時あるいは運動中に、自分自身の体と周囲の空間との相互関係・位置関係が乱れていると感じ、不快感を伴ったときに生じる症状】と定義されます。
・自分や周りが回っている、
・地面に対して垂直に立っているかどうかわからない、
・雲の上を歩くようにフワフワする、
・谷底に引きずり込まれるように感じる
などの感覚を指します。

脳は、
* 三半規管や耳石器など耳からの情報
*目からの視覚情報 
*手足や頚などの関節や筋肉からの知覚情報     を合成して自身の姿勢を認識しています。

異常が起きて、脳に伝達される情報の整合性が失われた場合、食い違いが小さければ脳が補正できますが、何かの理由でこの補正機能が十分に働かないと脳が混乱したままになって、平衡感覚に狂いが生じてしまいます。
この状態が「めまい」です。

ですから、
 *内耳の病気   だけでなく、
 *視覚、
 *頚や腰の異常、
 *(それらの情報を整理・統合する)脳の病気
がある場合でも、「めまい」を感じるようになります。
「めまい」で多くの種類の検査が行われるのは、こうした広い範囲の異常を総合的にチェックする必要があるからです。

西洋医学では、いまだ「めまい」の原因について不明な部分が多く、また分類についてもきちんと定まった見解がないようです。
西洋医学では、原因を明らかにするところから治療が始まるので、原因についてわからない点が多い現在、まだ「めまい」に対処できない部分が多いようです。
そのため、自律神経や精神的な問題が原因とされて心療内科を紹介され、脳内物質に関係する薬をすすめられてさらに症状が増え、いっそう具合が悪くなるケースもあるようです。

⑵頚性めまい

頚性めまいの特徴は雲の上を
歩くような浮遊感

「頚性めまい」とは、原因がくびにあるめまいのことです。

「日本めまい平衡医学会」では、頚部をひねることで起こる「めまい」の原因として、次の三つをあげています。
1.頚部の骨・筋肉・靱帯に異常がある場合  
2.頭部の回転による椎骨動脈の圧迫で起きる血流悪化
3.椎骨動脈周囲の交感神経線維への影響
  3.の場合は、めまいのほかに、痛み・筋肉の凝り・耳鳴りなど多彩な症状が見られます。

頚性めまいと症状がかぶる病名に「メニエール病」がありますが、ちょっと詳しくは「コラム」をご覧ください。

⑶鍼灸治療と「めまい」

中医学では、「清陽不昇(せいようふしょう)」の弁証のもとに気を通す治療をします。

「清陽」とは、呼吸によって大気から得た「宗気そうき」と飲食物から得た「水穀すいこくの気」が合わさった「気」で、この「気」がからだの細部まで循環して、人体が養われ、正常に機能する、と考えます。
「不昇」とは、「のぼらない」ことです。
つまり、「清陽不昇」とは必要な「気」がからだの上部に運ばれずに、脳をはじめとする頭部の器官が養われないので正常に機能しない、という意味です。
ここで、気を通す治療をすると全身の気が巡って、脳・目・耳など平衡感覚に関係する器官もしっかり滋養されて正常に機能するようになり、「めまい」の症状が改善されます。

当院では、耳への気血の流れを良くするツボと、西洋医学的にみて血流を改善するツボとを併用して、最も効果的かつ効率的な治療をしていきます。