ふつう成人の一日の尿量は、1000~1500mlです。
毎分約 1 mlの尿が膀胱にたまっていきますが、これが250~300mlと達するとはっきり尿意を感じ、トイレに向かいます。
トイレに入り、排尿してもよい状況になると、自律神経が膀胱やその出口にある括約筋をゆるめて、膀胱はポンプのように尿を押し出し、排尿が行われます。
この一連の流れが特に意識することなくできていれば、「おしっこ」に関して健康、つまり関係する神経や筋肉・臓器に問題はありません。

⒈鍼灸治療で効果が期待できる尿トラブル

くしゃみをした拍子に…

30代以上の女性の3人に1人が尿失禁を経験しているそうです。
尿トラブルは、「防寒」や生活習慣の小さな見直しで改善することが多くあります。
とくに年齢が上がってくると、「冷えてる感じ」や「暑い感じ」が若い頃ほどはっきり自覚されなくなります。
あたたかい季節はそうでもないのに、秋口以降、夜2回3回とトイレに起きるかたは、冷えてると思わなくても敷くものを厚くするとか保温性の高い夜具に変えるとか試していただけたら、と思います。

尿トラブルは、気持ちの明るさ(暗さ)にも大きく影響するので、色々お悩みになるより早めに当院にご相談くださいませ。
不要な心配のタネがなくなると、自律神経のバランスも整って、気分がすっきりしますよ。

さまざまな尿トラブルの中で鍼灸治療の適応となりうるのは、以下の2つのケースです。
①自律神経の働きをととのえることで効果が期待できるもの
②骨盤内の血流改善が、排尿に関係する神経と筋肉の機能・連携を改善し、効果が期待できるもの

⒉鍼灸治療で尿トラブルを改善する

年齢を重ねると、あるいは若い人でも出産後などは、尿トラブルを経験するようです。
大ざっぱにまとめると、尿は腎臓で1分間に約1ml作られ、膀胱に送られて溜められます。
ほぼ150mlくらいまでくると、溜まってきたことが意識にのぼり、さらに時間が経って250~300mlくらい溜まると、はっきりトイレに行きたいと思うようになります。
この一連の流れは、すべて自律神経によって無意識で行われます。

トイレ、行きたい!

ここで、冷えて膀胱の筋肉が広がりにくい、ストレスにより過剰に緊張している、などの場合、設計通りの尿量を溜めるのが難しくなります。
たとえば、まだ余裕があるのに切迫した尿意を感じたり、回数多くトイレに通ったり、夜中何度も排尿の為に起きなければならない、などの症状がみられるようになります。

鍼灸治療は、もともと自律神経の調整が得意なので、
①自律神経の働きをととのえることで尿トラブルに対処する、
②骨盤内の血流を改善して、排尿に関係する神経と筋肉の機能・連携を改善する、   
の2つともごく普通の治療効果としてあげられます。
腰痛や股関節周囲の整形外科的なトラブルで鍼灸治療を受けたら、その後軽い尿トラブルが無くなった、ということは日常的にあることです。

尿トラブルの治療だからといって特殊なことをするわけではないので、お気軽にご相談ください。
また、常習化した膀胱炎なども鍼灸で抵抗力を上げることで発現しにくくなります。
排尿すると痛い・灼熱感がある・尿が濁る、などの場合は、早い時期に婦人科か泌尿器科の診断を受けて、鍼灸治療も併用すると、より安心ですし、すみやかに解消できます。

⒊腎臓などに基礎疾患がない、中高齢女性に起こる尿トラブル

昼間の急な強い尿意

「急激に強い尿意(尿意切迫感)が起こる」や「尿失禁がある」などで、日常生活の質(QOL)が低下している場合は治療が必要です。  
いくつかの尿トラブルのタイプのうち、鍼灸治療が有効と考えられるものは以下の4つです。

①頻尿
通常、日中で8回以上、夜間は2回以上トイレに行く場合は「頻尿」とされます。
たくさん水分を取ったり冷えたために回数が増えても、頻尿とは言いません。

②尿失禁…意思に反して(尿をしたいと思わないのに)尿が出てしまう状態。
*腹圧性尿失禁…咳やくしゃみなどで腹圧がかかったときに尿がもれる。
*切迫性尿失禁…急な強い尿意と同時、または尿意に引き続いて、尿がもれる。
どちらか一つの場合もありますが、両方が同時にある場合もあります。

③過活動膀胱
「尿意切迫感(突然現れる強い尿意)を主症状とし、頻尿あるいは切迫性尿失禁をともなう自覚症状を特徴とする症候群」と定義されます。
尿が近くて、トイレに行きたくなると我慢できなかったり、尿意を覚えたとたんに漏れてしまう場合は、この可能性があります。

④おしっこに勢いがない(尿勢低下)
女性は尿道が短いことから尿もれが多いことはよく知られています。
でも逆に「なかなか尿が出ない」「勢いがない」「残尿感がある」などの場合も、尿トラブルに入ります。

⒋健康な女性の夜間尿について

夜間、排尿のために1回以上起きなければならない症状を夜間頻尿といいます。
(夜間1回でもトイレに起きれば「夜間頻尿」になります。ちょっと驚きました。)
加齢とともに起きる回数が増え、睡眠不足や疲労感が抜けないなど、日常生活での差し障りが大きくなります。

夜間睡眠中2回以上トイレに行く

夜間頻尿の原因は、大まかには
1)多尿・夜間多尿
2)膀胱容量の減少、
3)睡眠障害   に分けられます。

1)原因が多尿・夜間多尿の場合

1日24時間の尿量が多いと、夜間も頻繫にトイレに起きることになります。
糖尿病などの病気が隠れている場合は、その病気の治療を優先しなければなりません。
①多尿による夜間頻尿
<原因>水分の過剰摂取、尿量を増やす薬の服用、糖尿病など内科の病気によるもの、など。

②夜間多尿
夜間のみ尿量が多くなって、夜何度もトイレに起きるものです。
一つの目安として、65歳以上の方では、24時間の尿量に対する夜間尿量の割合が33%を超える場合は、夜間頻尿と考えられます。
<原因>・寝る前の水分の過剰摂取
    ・薬剤性のもの
    ・ホルモンバランスの乱れ
    ・腎機能障害などの内科の病気によるもの
    ・睡眠時無呼吸症候群によるもの

2)膀胱容量の減少

膀胱が過敏になって、少量の尿しか溜まっていないのに、トイレに行きたくなるものです。
一般的には、昼にも頻尿になることが多いです。
原因として多いのが「過活動膀胱」です。
膀胱に尿が少ししか溜まっていないのにトイレに行きたくなる、膀胱が勝手に収縮してトイレに駆け込む(尿意切迫感)、などの症状ががあります。

3)睡眠障害

眠りが浅くてすぐ目が覚めてしまい、そのたびに気になってトイレに行く場合です。

このように夜間頻尿の原因は様々なので、原因を明らかにすることが大事です。
そのためには「排尿日誌」をつけて、ご自分の排尿習慣を知るのがおすすめです。

⒌知らずにやってる尿トラブルを悪化させる姿勢

赤丸;膀胱兪、緑丸;坐骨の位置

骨盤が後ろに倒れ気味な場合を「骨盤後傾」といいます。
骨盤が後傾していると、腹圧が膀胱にじかにかかることが増えて、ふとした姿勢で尿漏れが起きやすくなります。
ツボのお話をすると、背中とお尻のあいだの、少し強く触れると骨がゴツゴツと手にあたるところ(腰仙部)には、骨盤内臓器に関係するツボが複数あります。
その中には「膀胱兪」という膀胱の気が集まるツボもあります。
そのため、ここを圧迫するような姿勢は「おしっこ」の出方に影響します。

たとえば、椅子の上に足を上げて膝を抱える、同じく椅子の上であぐらをかく、などの姿勢は、狭い椅子から落っこちないようにとどうしてもお尻が縮こまります。
また、椅子にごく浅く腰かけて上体の重みを直接腰仙部で支える姿勢も、筋肉を固くして血行を悪くします。
とくに、運転席の背もたれが後ろに倒れ気味の自動車では、降りるときに、「?!」となりやすいかもしれません。

腰仙部がこると、膀胱兪への気血の流れが悪くなって、長く続けると尿トラブルの引き金になったり、さらに悪化させたりします。
腰かけるときは、その名も「坐骨」でしっかり体重をささえ、腰仙部を不要なこりかたまりから守りましょう。

イスであぐらをかく
脚を組む、浅く腰かける
腰仙部を押しつぶす