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鍼治療が敬遠される理由の第一は、何と言っても「痛いに決まってる!」という疑いでしょう。
たしかに「まったく何も感じない」という場合よりは、「打たれたのは感じた」とか「ちょっとわかった」ということのほうが多いです。
でも、そのくらいです。
もちろん、中には「いった~い」や「チックン」もあることはあります、何しろ生きている体に鍼を打つのですから。
でも、ごくまれです。

薬には副反応、鍼治療にはからだに鍼が打たれる刺激、どちらも健康状態から少しはずれてしまったからだの軌道修正を行うのに、無いほうが望ましいけど、ある程度しかたがないと受け入れざるを得ないことではないかと、思っています。
とはいえ、現代の日本の鍼自体とそれを打つ技術は、実は世界的にみてもかなり高水準なのです。
ちなみに「鍼」という字は、日常生活で使う「針」の字と、まったく同じ意味です。

⒈「鍼」の特性  

⑴しなり・たわみ

まず、かたい鋼鉄製・太い・超鋭くとがれた尖端・表面がザラザラ…、こんな特徴がある鍼を考えてみましょう。
こんな針を打たれたら、痛くて治療どころではないことでしょう。

使い捨て(ディスポ)鍼

だから、現代の日本製の鍼はすべての点においてこの正反対です。
ステンレス製なので弾力があってよくしなり(たわみ)、表面はミクロの世界で見てもなめらかです。
折れにくいので細くでき(髪の毛と同じくらい)、加えられる力を柔らかく曲がることで吸収し、
鍼から人体に作用する物理的な力をとても小さくできます。

⑵鍼先の絶妙な丸み

当院で使う鍼は、松葉型といわれるタイプで鍼の先端にごくわずかな丸みがあります。
この微妙な丸みによって痛みが出にくくなっています。
ちなみに注射針の先はスパッと切り落とした形状になっているので、運が悪いと鋭い痛みを感じることがあります。

鍼管  

鍼管は、鍼の持ち手部分(竜頭りゅうず)がギリギリ通る太さの空洞がある、鍼よりわずかに短い管です。
鍼を刺入するときはこの筒に鍼を入れて皮膚に当て、出ている竜頭をトントンと軽くたたくことにより鍼の先が瞬間的に皮膚に刺入されるので、感じる痛みは小さくなります。
鍼治療で、「鍼を刺す」と言わず「鍼を打つ」と言うのはこのためです。

鍼を打つ場所

痛点にはまばらな場所・密な場所があります。
お裁縫で間違って針で刺してしまう指先はとくに痛みに敏感な部位で、臀部などの大きくて力強い筋肉は比較的鈍いのです。
場所によって痛みの感じ方がちがうので、それぞれの箇所で使う手技や打つ深さを選びます。

⒋鍼を打つ技術

鍼管を当てて鍼を打入するとき、鍼管が皮膚にきちんと垂直に密着しているか、術者が力で押し込まずきちんと体重をのせて打っているか、など痛くない鍼を打つにはそれなりの技術が必要です。
とはいえ、そのための国家資格ですから、あとは術者との相性や鍼灸院の雰囲気など、心理的要因で左右されるところが大きいと思います。

⒌当院で使う鍼

当院で使用する鍼は、「豪鍼ごうしん」という髪の毛くらいの細さで、柄の部分を除くと注射針の薬液の通り道をストンと通り抜けます。
まったく感じないとは言い切れませんが、誤って縫い針を指先に刺してしまったときの痛みとは比べものにならない小さな刺激です。
坐骨神経痛で痛いおしりのような、より大きな刺激でないと効果が得られない場合は太い針も使いますが、そうした箇所は感覚が鈍っているので針が刺さったこと自体もあまり感じません。