ひざの痛み

膝が痛くて階段の上り下りがつらい、イスから立ち上がるのが一苦労、しゃがめない…
こんな膝の痛みは暮らしの質(QOL)を低下させます。

⑴ひざの痛みと人体のつくり

膝の痛みの原因は「膝関節」だけにあるのでしょうか?
実は、そうではありません。
「膝が痛い 即 膝関節が故障した」わけではないのです。
そもそも膝は、ひざ関節の前側の筋肉が伸びて後ろ側の筋肉が縮むことで曲がります。
一方が縮んで反対側が伸びるのは、人体の関節でなくても、モノが物理的に「曲がる」ときに必ず起こることです。
あしでは、その「曲がる」中心に「ヒザ」があるので、「曲がらない・曲がるとき痛い」となると真っ先に「膝が原因」とされてしまいます。
でも、膝関節が傷んでなくても、前側が伸びず、後ろ側が縮まなければ、「曲げるのが困難」なのは実は当たり前なのです。

ひざ周りの筋肉
ひざ関節周囲の筋肉

もともと二足歩行の人間では、4本足のからだに比べて骨や筋肉への負担が大きくなります。                     
そして、人体の設計の大前提は、「重い頭を真下から背骨で支える」ことです。
だからこの前提を踏み外した、つまり「人体の設計から外れた姿勢」、たとえば頭が前にのめった姿勢などが多いと、全身の関節の負担が大きくなり、筋肉が働きっぱなしの状態が発生します。
その場合、筋肉がかたよった使われ方をして硬くなってしまうところも増え、血行が阻害されて痛みやしびれが生じやすくなります。

膝が痛くて来院なさるかたでは、「膝関節」というパーツには重大な故障がなくても、膝関節まわりの筋肉がかたくなり、血行が悪い状態が長く続いた結果、痛みが生じている場合が多くあります。
この筋肉の緊張をやわらげて、必要な時以外筋肉がゆるんで痛みがない状態が当たり前になることを目指していくのが大事です。

《当院の鍼灸治療》
まず膝の痛みが出た経緯を詳しくお聞きします。
原因が膝自体にあるのか、他の部位をかばったために出た痛みなのか、など本当の原因をさがして治療するためです。
また膝だけに着目するのではなく、腰・足関節(足首の関節)まわりの筋肉のかたさ、さらに足の裏にウオノメなど痛みの原因になるものがないか、も観察します。
鍼で血流を促し、お灸(アトにならない)も併用して熱の力も借りて、とにかく筋肉や腱の弾力の回復をめざします。
またご説明も、わかりやすく納得いただけるように気を配っています。
治療自体も気持ちいい、とおっしゃって下さる場合が多く、ご説明で不安感も薄れ、より治療効果が高まるはずと考えています。              
 

⑵「健康な膝」の膝痛の原因

上記のように、膝自体には故障がなくても痛みやこわばり感は出ます。

足先が冷えると膝も冷えます
第1の原因 :冷え

冷えると、何でもこわばって柔軟性が落ちるので、かたく伸びにくくなりますが、筋肉も同じです。
膝まわりが冷えると、前側の筋肉は伸びにくくなり、後ろ側(ひざ裏)の筋肉はこわばって折りたたまれにくくなるので、「膝を曲げる」動作がぎこちなくなり、痛みをともなうようになります。
膝自体を冷やしていなくても、足先などが冷たいと、その部分にあった血液が心臓へ戻る際にひざ周りを通過して、熱を奪ってしまいます。
ひざから下全体が冷えないように気を付けましょう。

お風呂でポカポカ!

また、やっかいなのは「冷えた」とか「脚が冷たい」などの自覚がなくても、冷えが筋肉の柔軟性を下げることです。
むしろ、冷え方が重くなるほど自覚が薄れて感じなくなります。
極端な話、「ほてって熱いくらい」というのは、ほとんど冷えの「最終形態」です。
とくに夏は、日盛りの気温に合わせた服装をして、朝や夕方のそれほど気温が高くない時間帯も同じように手足を多く出していることが多く冷えが入り込みます。
中高年ではとくにそこへの対応が必要になるので、生活習慣を見直して「冷え」をブロックする意識が大事です。

膝の曲げ伸ばしが難しいときは、まず膝の上下の筋肉のこわばり、さらには「冷えていないか?」を疑いましょう。
ぬるめでいいので湯船に10分以上つかる、自分の熱を逃がさないために手持ちのズボン下やレッグウォーマー、靴下を身に着けて保温し、様子をみます。
これで症状が軽くなれば、ホントに大助かりですね。

②第2の原因:使い方が足りない=運動不足

動きは熱を生み、血液をまわして生命活動で出た老廃物を運び去り、新しい栄養素や酸素を呼び込んで新陳代謝をうながします。
また、筋肉ポンプの作用で静脈血を流し、水液の停滞もなくします。
膝についても、長時間イスに座ってのデスクワークや座りっぱなしのテレビ鑑賞では、前面は伸びっぱなし、反対側は曲がりっぱなしで、硬くこわばってしまいます。
この状態で、急に膝の曲げ伸ばしを伴う動作をすると、膝にはいつも体重がかかって苦労していますから、うまく支えられずに「イタタタタ!」となることがあっても、ちっとも不思議ではありません。

【対策】
膝の痛みに悩まされたくなければ、「冷やさない・あまりにジッとしていない」ことが大事です。
足先が冷たいとその冷たい血が心臓にかえるとき、膝の熱を奪います。
またパソコン作業でも実はひそかに踏ん張っているので、とくに利き手側の脚には力が入っており、しだいにこわばっていきます。
よく言われることですが、1時間に1回立ち上がるだけでも血行が良くなり、むくみ方も違ってきます。
筋肉をいたわる第一歩は、筋肉をこまめに使ってあげること、合わせて熱を逃がさない服装で入浴も活用すれば不安感も消えていきす。