いえいえ、そうとばかりも言えませんよ。
日本人は痛みに敏感な(弱い)民族、奈良時代に大陸から鍼の技術が伝わって以来、ずっと痛みを緩和する方法をさがしてきました。
そして、現代の日本の鍼治療による痛みはとても小さなものになり、日本の鍼術はとても心地よいものとして、世界中から高く評価されています。
一方、中国の伝統的な鍼治療では太くて長い鍼を使うので、かつては、「痛いし血もダラダラ出るけど、その後はつらい症状が軽くなってそのまま治ることさえあるのだから、いっとき我慢するのは当たり前じゃないか」という感じだったらしいです。

では、なぜ生きたからだに鍼を打つのに、痛くないのでしょうか?
そもそも鍼治療で一番痛みを感じやすいのは、鍼が皮膚をつらぬく時です。
皮膚の表面には「痛点」という痛みを感じるセンサーが、1平方センチメートルあたり平均130ほどあるそうで、目には見えませんから避けることができません。どんなに細い鍼でもそこに当たれば痛みを感じます。
でも幸いなことに、このセンサーは一定以上強い刺激でなければ反応しない仕組みになっています。
つまり、刺激がその一線を越ないように、しかも効果は最大になるように工夫していくわけです。
必ず治療前にご説明しますので、ご不安が大きい場合は納得できるまでおたずねください。

痛くない鍼のポイントは、
 ①鍼自体の特性、
 ②鍼管、
 ③鍼を打つ場所、
 ④鍼を打つ技術、 の4点です。
くわしくはコラム「針を打っても痛くない理由」をご覧ください。

⒉鍼を打って血が出ないはずがない!
縫い針(左)と鍼灸用の鍼(右)

ところが…
当院で使う針は、たいへん細くしなやかです。
そのうえ、健康な血管は弾力があって、鍼という「異物」からスルッと上手に逃げてしまう場合がほとんどです。
とはいえ、疲れや無理から血行が悪くなっている部位では、毛細血管の壁となっている細胞も酸素不足・栄養不足で弱っており、鍼が直接触れなくても近くに来た刺激だけで、血管壁が痛みもなく崩れて、血液が漏れてしまうことがあります。
血管から漏れ出た血液は体外へ出ることも、皮下にとどまって内出血となることもあります。
この「青たん」は、若い方なら1週間くらいで消え、ご年配のかたでは2週間たってもうっすら色が残っていることがありますが、必ず消えます。
鍼治療による青たんは血行不良が原因なので避けられない点はありますが、治療を重ねて血行が改善すれば起きなくなるので、治療効果が出ている目安にもできます。

⒊お灸のアトは「やけど」にならないの?
火が直接皮膚に触れない間接灸

お灸は、「熱でからだを刺激して回復力を目覚めさせる治療法」です。
当院で使うのはすべて、皮膚と燃える部分とのあいだに空間や吸熱緩和紙がある「間接灸」なので、アトは残りません。
とはいえ、回復の引き金になるのは熱刺激なので、効果を得るには多少の熱さと我慢は必要です。
ご自分の感覚で「熱い」と言ってくださればすぐ取り除きます。

使い捨ての鍼
⒋鍼で感染することはないですか?   

当院で使用するのはすべてエチレンオキサイトガス完全滅菌の使い捨て鍼です。
石鹸と流水でしっかり洗って、ペーパータオルで水気を除いた手指で施術直前に開封しますから、雑菌やウイルスのご心配も、もちろんほかの患者さんの病気が感染する心配も、一切ご不要です。

⒌鍼灸治療で具合が悪くなることはないですか?   

鍼灸・あん摩マッサージ指圧の治療には、国家資格が必要です。
当院では、臨床経験が豊富な鍼灸師が慎重に治療するので、治療をきっかけとして具合が悪くなることは通常ありません。
でも、いくつかご注意いただきたいことがあります。
①極度の疲労や寝不足・空腹・水分不足などの状態で、治療を受けるのは避けてください。
 血圧の不安定などから気分が悪くなる可能性があります。
②ひどいコリなどによる血行不良が原因で、しびれや痛み、その他の違和感が出ている場合、治療で血行が良くなると、一時的に痛みや違和感が増悪する場合があります。血行不良で機能低下していたその部分の感覚神経が治療による血行改善で機能を回復し、脳に居心地の悪さを伝えられるようになるからです。
回復への通過現象なので、長くても一日半くらいのあいだに徐々に楽になっていき、治療を重ねるたびに程度が軽くなります。

⒍鍼灸治療はクセにならない?
鍼灸治療の翌々日

鍼灸治療には、薬のような習慣性がないので、意思に反して体が欲するということはありません。
でも治療後の重荷を下ろしたようなホッとする解放感、湯上りのような全身のポカポカ感、気になっていたこわばり感が消えて楽になっているうれしさ、などから次の治療を楽しみにする気持ちへと続いていくのは本当です。
実は日本の鍼灸の心地よさは、海外に広く知られています。
ちなみに、スポーツの試合当日にベストの状態にもっていくなら、試合の前々日、つまり試合が明後日にあたる日に治療を受けるのが良いようです。

⒎何回くらい通うの?

症状や状況などによって、通院のペースも必要な回数も異なります。
通院を強制するようなことはありませんし、ご納得いくまで説明しますので、ご説明のとおりにご来院ください。